友が天に召された。

そよ風が新緑の香りを運んで来る、桜の季節。



そんな春の日に友は逝った。


彼とは昨年末、毎年恒例の冬のキャンプミーティングで初めて出会った。



伊豆の山あいでのキャンプミーティングで、年中最後の「イベント」になっている。
毎年、キャンプ場を借りている。
季節柄、私達以外の利用者はいないので、いつも「貸し切り」の様なものだ。
温暖な気候の伊豆半島とはいえ、冬の日没ともなれば一気に冷え込んで来る。
深夜ともなれば、尋常な寒さではない。
そんな私たちに、キャンプ場の管理人さんが、管理棟に「薪」を用意してくれている。
キャンプサイトは、管理棟から急な坂道を登りきった、丘の上にある。
ただ歩いて登るだけでも、息があがってしまう様な急坂だ。
皆が酒を酌み交わし談笑している。
そんな中、彼は夜露で湿った薪を、大事にしている愛機「W650」のシート上にゴム紐で巻き付け、何度も何度も運んでいた。
寒さで凍える仲間達の為に。自ら率先して。



彼が運んでくれた「温もり」を囲んで、夜が更けるまで語り明かした。



「人の為に行動出来る人、いい人と巡り会えた」。
あの時、彼を見ていてそう思った。


あれから4ヶ月。
恒例の丹沢キャンプに家族と車で参加した。



少し足をのばして、丹沢湖を見てから現地に入った。



暫くすると「トットットッ」とバイクの排気音が聞こえてきた。
一番乗りは彼だった。



手を振るとコチラに気付き「お久しぶりです!まだ誰も来てないですか?」と、
4ヶ月前に一度しか会っていない私を、覚えていてくれた。
「今度、自分で車検受けようと思うンですけど、このハンドルで受かりますかねぇ?」
などと聞いてくる。
人懐っこくて、誰とでも直ぐに友達になれてしまう。フレンドリーな彼。



ぞくぞくと仲間が集まって来る。



到着する仲間一人一人に駆け寄って、笑顔と握手で再会のよろこびを伝えていた。












天気予報通り、夕方からは雨と風が強まった。 週末の仕事を終えて、風雨の中駆けつけた仲間もいた。



キャンプミーティングでは、気の合った者同士で幾つかの「輪」が出来る。
他愛ない話の中で、アチコチから笑い声が聞こえてくる。



酒の席が苦手な私は、ほろ酔い顔の仲間が見える所で、写真を撮ったり、料理を作ったりして過ごす。
幾つかの「輪」と少し離れた場所が、心地よい時間を過ごす私の「所定の位置」。


会話の「輪」の中から、彼の声も聞こえていた。
話し上手な彼の周りには「笑顔の輪」が出来ている。



「あの道はカブで走った時が一番面白かった。」
「ホンダのCDも持ってるんですけど、なんか調子が悪いんですよぉ。」
彼の言葉の節々からは、その「単車好き」が伝わってくる。
私と同じ「オトキチ」だ。

そして、とても印象に残る人だった。




深夜2時を過ぎた頃、皆はそれぞれのテントへと入っていった。
私も明くる日が仕事の為、帰宅した。


翌日の午後、私と同じく車で参加していた仲間からの連絡で、彼が亡くなった事を知らされた。
最期の時も「人の為」にとった行動が、彼の命を奪ってしまった。


かけがいのない「友」を失った。
36歳。あまりにも若過ぎた。
出会ってから4ヶ月。あまりにも短過ぎた。

あなたは私たちに「命」の儚(はかな)さと、今を生きている「幸せ」を教えてくれた。

「袖すり合うも他生の縁」。そんな言葉通り「生まれかわり」というのものがあるのなら、
来生もいつか何処かで、同じ「単車乗り」として、また巡り会いたい。
満天の星の下、時を忘れて語り合いたい。

あなたは今、風の中にいますか?
心地よい風は吹いていますか?




風の中の君へ。